『階段ランナー』 吉野 万理子/著 徳間書店
みなさんは普段階段をのぼっていますか? エスカレーターやエレベーターが近くにあったら、わざわざ疲れる階段なんかのぼりたくない、という人は多いと思います。もちろん私もそんな一人でしたが、この本を読んだらそんな気持ちがちょっぴり変わったんです。
主人公は高校2年生の男女。母が起こした事件をきっかけに水泳部をやめてしまった広夢と、卓球の全日本選手権で、イップス(突然思い通りのプレーができなくなる心因性の病気)を発症してしまった瑠衣です。
高校を辞めることになった社会科教師の高桑先生と偶然話すことになった2人は、先生が階段研究家であることを知ります。先生は階段マニア(!)で、階段を語るブログを運営していました。2人は先生がいなくなったあとも先生のブログを読むようになり、なんとなく階段が気になるように。そしてそのことをきっかけに、お互いの悩みを打ち明け合える友人になっていきます。
ところで階段なんてただ上り下りする設備、と思っていませんか。そもそも有名な階段なんてものが存在することすら知らないのではないでしょうか。ですが読み進めていくと、語られる階段には知られざるヒストリーがあり、ロマンや奥深さがあることがわかります。
そしてついに2人は先生から「JR京都ビル 大階段駈け上がり大会」なるものに誘われます。これは実際に存在する大会なのですが、どんな大会なのかはぜひ本で確かめてみてください。
いままで階段嫌いだったあなたも、読み終わった後は思いっきり駈け上がってみたくなるかもしれませんよ。