『ぼくの帰る場所 』 S.E.デュラント/作 杉田 七重/訳 鈴木出版
もうすぐ中学生になる「ぼく」は走ることが大好きで、ランナーになるのが夢。両親は学習障害があってお金の管理や手続きがうまくできないけど、近所に住むおじいちゃんに助けられて仲良く暮らしていました。でも、おじいちゃんが突然死んでしまって、「ぼく」の家は危機にみまわれます。
「ぼく」は両親の代わりにお金の事を心配しなくちゃならないし、ランニングシューズが小さくなって走れなくなってもどうにもできません。大好きなおじいちゃんを失った心の穴は、走ることで埋めるしかないっていうのに。
しかも問題はそれだけじゃなく、そんな家の事情がもしもばれてしまったら、家族と引き離されてしまうかもしれないのです。
『ぼくの帰る場所』の原題は「Running on empty」。Run on emptyは日本語にすると「ガス欠で走る」になります。そこから「うまくいかずに低空飛行を続ける」という意味になった言葉を、走ることが好きな「ぼく」の気持ちとかけたタイトルになっています。
ガス欠で走り続ける「ぼく」の帰る場所って?
家族を愛しているのに恥ずかしいと思ってしまう。
自分が頑張ればいいんだって人に頼ることができなくなる。
そんな思春期の気持ちを「ぼく」の言葉でつづった作品です。
「ぼく」は走り続けるのか、それとも別の道を選ぶのか。
最後まで伴走する気持ちで見届けてください。