『MINECRAFT ジ・エンドの詩』 キャサリン・M・ヴァレンテ/作 金原 瑞人/共訳 松浦 直美/共訳 竹書房
マインクラフトというゲームを知っていますか？
土や石などが単純な四角いブロックで構成された世界で、色々なブロックを採取したり、敵と戦ったり、建物を建てたり、自由に好きなことをして遊べる幅広い世代に人気のゲームです。
『MINECRAFT ジ・エンドの詩』はそんなマインクラフトの世界を舞台にした小説の一冊になります。
ゲームを知っていればどんな世界か想像しやすくなりますが、知らない人でもＳＦ小説として読めば違和感はありません。
さて、この物語はゲームの敵の一種である「エンダーマン」のお話です。
「ジ・エンド」という裏側の世界に住むエンダーマンの双子の兄妹には親がなく、二人だけで住んでいました。全てに「嫌い」と言うペットと暮らし、仲間の誰とも似ていない親友が時々訪ねてくる、はみ出し者の集まりです。しかし、表の世界からゲームのプレイヤーである「人間」が現れる時、思いもよらない方向に事態が動きます。
なぜ双子は二人だけで暮らしていたのか、なくした記憶があることに気付いた彼らは、やがて「ジ・エンド」の終わりと誕生に係わる秘密に導かれていくのです。
この本の魅力はゲーム的な面白さだけではありません。ミステリーの要素もありますし、平和な世界が独裁国家のようになっていく様や、価値観や文化が違う者同士の出会いを、ブロックくらい単純にして描いてもいます。
そして何よりもこれは、「人と違う」ことで世の中や大人から疎外された子どもたちが寄り添い、互いを愛することで真っすぐと立っている、そんな話でもあります。
物語の果て、彼らの手に残るものは何なのか。エンディングのその先に思いをはせることで、想像力の限りどんな遊び方をしてもいい自由なゲームであるマインクラフトのように、あなただけの物語を完成させてほしい一冊です。