『母さんが消えた夏』 キャロライン・アダーソン /著 田中 奈津子/訳 講談社
主人公はYA世代の入り口に立つ6年生のカーティスです。カーティスは母親と弟と三人暮らしですが、その母親が何日も家に帰ってこない、というところからこの物語は始まります。
もしみなさんが六年生で突然弟(もしくは妹)と二人っきりで何日も家に残されてしまったら、どうするでしょう? 普通なら先生や近くの大人に相談しますが、カーティスの場合はそれができません。子どもの面倒を見られない母親だと思われてしまったら、兄弟はばらばらに里親に引きとられることになるからです。小さい頃、里親の元で暮らしたことのあるカーティスは、幼い弟が自分のようにいじめられることだけはいけないと、母親を信じて母親がいないことを大人に知られないように暮らします。
しかし、お金も食べ物もあっという間に底をつき……。
そんな時、向かいの家の難しくて風変わりなおばあさんと親しくなり、兄弟はおばあさんに連れられて忘れられない夏を過ごすことになります。
カーティスの母を信じたい思いと、心のどこかに浮かぶ残酷な現実。弟を一生懸命に守りたい気持ちと、弟のために自分を押し殺さなくてはいけない苦しさ。読んでいるうちに、その等身大の感情にきっと自分の気持ちを重ねてしまうでしょう。
二人の母親はなぜ帰ってこないのか、弟を可愛がるおばあさんの抱える秘密とは?
そんな「母さんが消えた夏」は意外な結末に着地します。どうぞ見届けてみてください!